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雑談集

阿育大王の事泉涌寺の僧の申しは、舎利弗の一搏(たん)食の事お、律に一搏の食お水お以てこれお足といへり、五穀水味殊勝にして、人の器つよき昔は猶も然るべし、今の末世には、人よわく五穀又気味なし、持斎しがたかるべし、四五度も食すべしと、此事耳よりなり、鑒真和尚、日本へ渡り給たりし昔しは、寺寺隻一食にて朝食一度しけり、次第に器量よわくして、非時と名て日中に食し、後には山も奈良も三度(○○)食す、夕のおば事と山には雲へり、未申の時ばかりに非時して、法師原坂本へ下りぬれば、夕方寄合て事と名て、我々世事して食すと雲へり、