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守貞漫稿
二十四雑劇
芝居茶屋中飯、江戸は幕の内と号けて、円扁平の握り飯十顆お僅に焼之也、添之に焼雞卵、蒲鉾、こんにやく、焼豆腐、干瓢、以上是お六寸重箱に納れ、人数に応じ、観席に持運ぶお従来の例とす、専ら茶屋にて製すこと勿論なれども、小屋は自家に調之ず、芳町に製之店ありて、一人分価銭百文とす、笹折に盛りたり、是お茶屋にては重に詰させて客に出すもあり、今の地に遷ても芳町より出店お出し、両店とも万久と雲、名物の一也、又客の好みにより是お用ひず、茶漬或は本膳おも調ずる也、是は専ら芝居に運ばず、茶屋にて食す、