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古事記伝
二十三
さて此にて弓端之調と雲は、弓以て射獲たる獣の肉、又其皮などの類お貢るお雲り、上代には、常に獣肉お食し、又其皮お衣褥などにせしことも多かりし故に、其お主として如此は雲るなり、〈彼仁徳紀の、佐伯部が兎餓野の鹿お苞苴に献し事など思合すべし、又古語拾遺に、此男弭之調、女手末之調の事お記して、今神祇之祭、用熊皮鹿皮角布等此縁也、と雲り、然るに令式のころに至ては、凡て戦お用ひられしこと、やゝ希なりと見えて、調の雑物の中にも然る物は見えず、副物の中に、猪脂三合、脳一合五勺、鹿角一頭、鳥羽一隻、また諸国貢献物の中に、皮革羽毛など見えたるのみなり、主計式には、大鹿皮一張、小鹿皮二張、鹿猪脯、雉脯、鹿猪鰭、猪膏、鹿角、緋革など見えたり、〉