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兎園小説
五集
奥州南部癸卯の荒飢天明三年癸卯十一月十一日、奥州三戸郡南部内蔵頭殿領分、八戸の恵比須屋善六より、本店江戸田所町かど、井筒屋三郎兵衛へ遣しゝ書状左の如し、〈○中略〉 一捨牛馬は御制札第一之御法度に御座候へ共、此節悉捨申候、右之牛馬お乞食共引参り、皮お はぎ鹿と申候而売候お、馬と存ながら価の下直に任せ馬肉お買ひ、能鹿と申候、直段平生のお つとせい抔の如く、目方にて売買致し、鹿に不限何品にても食物に相成候品、総て魚等の直段 に御座候、