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松屋筆記
九十七
肉市按文化文政年間より以来、江戸に獣肉お売家おほく、高家近侍の士もこれお啖者あり、猪肉お山鯨と称し、鹿肉お紅葉と称す、熊、狼、狐、狸、兎、鼬鼠(いたち)、鼯鼠(き子づみ)、猿などの類、獣店に満て、其処お過るにたへず、又蝦蟇お啖者あり、いづれも蘭学者流に起れる弊風也、かくて江戸の家屋に不浄充満し、祝融の怒に逢事あまたゝび也、可哀可歎、