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続古事談
一王道后宮
一条院御時、台盤所にて地火爈ついでと雲事ありけり、左大臣、〈○藤原道長〉伝大納言〈○藤原道綱〉なむどつかうまつられけり、大納言は銀にて土鍋おつくりて、ひさごおたてヽ、いもがゆおいれたりけり、中の渡殿に上達部候て、清凉殿の広庇に、庖丁の人々高雅明順など候けり、供御まいらせ、人々の衝重すへて、御酒しきりにまいらす、管絃お奏す、酔にのぞみて伝大納言たちて舞ほどに、冠おちにけり、人々咲あへるに、広幡のおとヾあざけられけるおきヽて、此大納言何ごといふぞ、妻おばくなかれてといはれたりける、聞人はぢおしらずうたてき事也とぞ雲あひける、