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老人雑話

信長、美濃斎藤が所へ婿入の時、広袖の湯帷子に、陰形お大に染付て著し、茶筅髪にて往く、山城守が家老等、国境まで迎に出て、其様お見て胆おつぶし、密に雲ふは、此様の人に七五三(○○○)の式法などは不都合ならんとて、早使お返し、田舎家具の大なるなどお用意せよと雲、信長宿に著て、束帯正しく調て、山城守に対面す、又驚き騒ぎ、もとの七五三(○○○)の式法お用ゆ、此時山城歎じて雲、我国は婿引出物に仕たりと、其心は我子共など、国お保つことあたはじ、信長に取れんと思ふ也、