[p.0113]
料理通大全
初編
茶事会席の料理心得之事一茶事の会席は、かつて料理にあらず、依て庖丁の花美お好まず、食するものゝ味ひお本意とする故、意は料理の二字に協ふて面白き事多し、然るに会席といへば、何か面白き取合とのみ心得て、食するものゝ味ひお失ふ道理お知らず、会席は二菜三菜に限り、数菜ならねば、塩梅の宜きお元とす、是お本意とすべし、珍敷取合の悪物好はかならず無用也、其いにしへやんごとなききみ、利休の亭へ御立寄らせ給ひし時、利休取敢ず土器にあらひ米お盛て、茶お奉りし事ありとかや、甚感ある事なり、