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新撰会席しつぽく趣向帳
〈四季混雑〉献立の大旨〈大菜器物は亭主の好次第〉第一湯鯛 〈大猪口〉煮かへし酢〈煮かたは奥にあり〉 〈中の鯛よろし、煮かた奥にあり、または鯛麪かき鯛もよろし、〉〈小菜中皿〉鱠〈青酢 さより木くらげ赤がいみつば〉 小皿〈わさびおろし大こんねぎとうがらし〉〈小菜小鉢〉あへ物〈ひしこぬたからしあへ、或は蜆青あへ、またはふくだみ塩からの類、〉 〈小菜中皿〉煎付〈蚫か蛸か、さゞい坪焼かあるひは当坐ずしか鎌くら海老か焼玉子か、〉〈小菜大猪口〉精進物〈嫁菜ひたし物か、何にてもさらりとしたるもの一二種あるべし、大菜は吸物なり、小菜は取さかなに取なれば、其心得にて少し宛出して折々取かゆるれば馳走なり、四季折折の物は部分の所にて身れば、趣向も思ひ付も物ずきも自由なるべし、小菜四五種づゝはたえず卓の上にあるべし、〉〈大菜器物は取替る度々にかたち替るおよしとす〉第二味噌汁〈こち、かいわり菜、あるひはこちのふぐ料理などよろし、四季部分汁の所にて見るべし、まへにもいふごとく、大菜は常の料理の吸物または汁煮物お大菜と名付たると覚てよし、〉〈大菜〉第三すまし〈精進物よろし 奥の煮物吸物精進の部にて見合すべし〉〈大菜〉第四薄くず煮〈あんばい大事也 きんこ、生椎茸、生姜、又は小鴨、摘麩、せり、〉〈およそ此あたりにて、上戸と下戸のわかちあるべし、是第一の心がけ也、下戸あらばここにて油あげもの、雁もどき、又はけちえんの類、下戸は油あげの類お好人多ければなり、一概にいふにはあらず、〉〈大菜〉第五焼塩あんばい〈水吸物のこゝろ 也雲わた、せん柚子などの類よし、なお奥にて考ふべし、〉〈大菜〉第六赤みそ汁 〈大蜆からし此類の品用ゆべし〉第七 飯 〈海苔飯、黄飯、紅飯、麦飯、挽割飯、右常のごとく辛味おそへ、煮出し薄醤油なり、〉 〈しかし重菜のあとなれば、上茶にて茶漬の方よろし、〉 香物 〈つけあわせあるひは一色〉 〈糠漬糟漬は亭主の風流にまかすべし、〉 菓子 〈これまた同断なり、しかし四季の景物遠来の土産などは、麁なる物にても用べし、上品の物はいふに及ばず、〉 茶 〈薄茶、濃茶、煎茶出し茶、此四種の物は、賓と主の時のよろしきに随ふべし、〉 献立畢