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塩尻
三十三
一異邦淆饌に〈料理献立の事〉獣肉お先とす、魚鳥是に次ぎ、先是お喰ひ酒お呑、後飯お服せり、我国の飯お第一にするもろこし古への風也、阿蘭陀の如きは、もろこし人の調味に似て亦異也、酒肉蔬菜羹に湯お食て、飯お〓せず、唯わづかに粉餅お用ひて止む、近きころ長崎より筆して贈りし通使の者お、紅夷饗する治具〈献立の事〉左のごとし、賢按、今俗卓袱(しつほく)といふ、すらか〈ちさ せんうど さん玉子 せん人じん さきひともじ 豕の皮肉〉 かけ汁〈ほるとがる油 酢塩 胡椒粉〉 すとう〈うなぎ さあり紅 夷茸也 胡椒 醤油少塩 少入て煮〈る〉〉 こおる〈紅毛のからぺな 塩漬おろすとぶたのみお細に切豕の百尋に結入〈る〉牛肉 にくつくの粉 胡椒の粉 醤油少塩入て煮〈る〉〉かりおら〈雞の切身 せんひともじ こへんとう さふらん 粒胡椒入て煮る しやうが くづのこ入る 〈上下玉子にてせむ醤油少塩少入て煮〈る〉〉 おつふへヽる〈鴨 鶏のみ 丸(&○)玉子〉酒〈ふ(△)らんそうえんお入て煮る塩少砂糖少〉 はすてる汁〈鳩鶏肉玉子丸くして醤油少塩少入て煮る〉塩牛肉 以上