[p.0136]
紅毛雑話

料理の献立往年玄沢子〈○大槻〉崎陽に遊学せし時、紅毛の卓袱お食せしとなり、其時の菜帖(こんたて)左に記す、「ぱすていそつぷ」〈鶏かまぼこ、椎茸せん、氷こんにやく、ふりたて玉子、ねぎ、すだしの如き塩仕たて也、〉 「こくとひす」焼肴 「はくとひす」油揚魚 「ろすとるひす」浜焼鯛 「ふらーとはるこ」猪の股丸焼 「かるまなーちい」〈猪の薄身 塩こせう摺こみやき〉 「こてれつと」〈雞 胡椒 肉豆寇の花 葱 右よくたゝきて紅毛紙に包みやき〉 「らーぐー」〈雞たゝき丸めて しひたけ ねぎ すましあんばい〉 「げーるう〈お〉るとる」〈にんじん 油にて揚、醤油にて煮しめ、〉 「すぺなーん」〈菜 みぢんにたゝき「ぽーとる」乳酪にてざつと揚て皿にもり 玉子 四つわりにしてもりあはせ〉「ぶらーとるぼつく」野牛の股丸やき 「はるとべーすと」〈鹿の股丸やきにしてからし酢かけ〉 「ぶらーとるえんとほーげる」鴨丸煮 「けれひとそつぷ」海老がね、 菓子「からていらぶろーと」花かすていら 紙焼かすていら 〈紅毛紙お箱に折かすてらのたねおつぎ、焼なべの中へならべて焼たるなり、〉 「すぺれつ」〈玉子小麦右水にてねりまぜ引のばして、縄のごとく捻り、油にて揚たるくわしなり、〉 「ぽーふるちす」菓子の名 「たるた」同 「おぺりい」〈花の形に拵へたるかすていら也、大さかぶとの鉢ほどあり、〉 「すーとあつぷる」蜜柑 以上二十一種