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秋斎間語

真菜(まな)、麁菜(そな)といふ時、真菜はまなとよみて魚也、故にまな板まな箸といふは、魚板、魚ばしなり、然るに精進物調ずるまな板の名はいかゞ、明月記などに、今日姫君御真菜始なんどあるは、魚おまいりそめらるゝ事勿論なりとぞ、予おもへらく、すべて菜の字肉にもつかへばこそ、孔子おまつるお釈奠とも釈菜ともいへり、釈もそれ〳〵にときわけてつらぬる義、菜おつらねならべたる心なり、扠魚おなといふ事、京のことばに鮓魚といふ、魚屋お魚屋といふ、酒の菜おさかなといふは、魚にはかぎらぬ事なるべし、菜いろ〳〵取まぜて煮たるお、むかしは合菜といひしとなん、清少納言枕草紙に、たくみの物くふこそいとあやしけれ、〈○中略〉あわせお皆くひつればと雲々、今はかゝる古語も絶たり、