[p.0142]
大草殿より相伝之聞書
一出陣御肴集養の事、主人貴人もしかとは居たまはず候、うきさそくにて御座候て、御酌まはり候へば、打あふびの前の二ばんめお、御口にあて御懐中有て、御盃三つかさねたる上の盃お取、三ど御酒きこしめし候て、御酒の下おしたの盃に御捨候て、かはらけ二つの下にかさね、又二こんめには、かちぐりの五つすはりたる中お取、御口にあて懐中有、又上の盃お取、三ど御酒きこしめし、かはらけお又下に御かさね、三献めには、こぶ五つすはりたる前二番めのおとりて、又口にあて懐中有て又御盃お取、三どきこしめし、こぶ左のひざおかづき、かはらけおば又下に御かさね候へば、最前の上のかはらけ又後に上に成なり、一御帰陣の御肴は、かつて、うつて、よろこぶとくみ候、御さかなあげ様の事、出陣には相ちがい候、いつものごとくさいの外にて、ちとかゞみ、左の足よりあがる也、御前にていつものごとくひざおつきあげ候て、帰り様は左とも右ともなく、そのむきよきかたに帰る也、