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老の長咄
おのれ好めるものとて、近しき友鯲(どじよう)お一升ほどくれられたり、よきものえたりと思ふ折から、一静といへる友来たれり、幸なるかなこれお煮んといへば、先待れよ、こなたにては世話なり、我が宿にて煮させ申べしと、其まゝ持行ぬ、間もなく下人に鍋お提させ、酒一陶(とくり)そへてぞ来たる、こはふしぎ、はやく煮べきものならずと思ひながら見てあれば、居酒やの煮おきのどじやう汁なり、是はいかにといへば、さればよ、けふは我心ざす事あれば、かくははからひしなりといひつゝ、喰ひ、酒も皆呑つくし、先の鯲お又取よせ、いさ〳〵御堀へはなしなんと、川辺にいたりてうちあくれば、おほくの鯲れい〳〵とさる、