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瓦礫雑考

鴫やき たぬき汁又たぬき汁は、守武千句に、小町こふ四位の少将たぬきにて、もゝ夜もおなじ丸ね丸やき、といへるこれなるべし、されども今の蒟蒻お味噌汁にて煮たるにはあらず、大草家料理書に、むじな汁の事、〈たぬきもむじなも料理はおなじかるべし〉焼皮料理共雲、但わたおぬき、酒のかすお少あらひてさかはゆき程の時、腹の内に右のかすお入て則ぬひふさぎ、どろ土おゆる〳〵として、能々毛のうへお泥にてぬりかくして、ぬる火にて焼候也、やき様の事、下にぬかおしき、上にも懸てうむし焼にして、土おおとし候得者、毛共に皆土にうつり候お、其儘四足おおろし、なまぬる湯に能酒塩はいかにもかけしほしてさし候也、と見えたり、これら名はいさゝかのたがひにて、其実は今と大に異れり、