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関の秋風
狸お得しかば、庖丁して汁にさせたり、誰しも初めてくふ事なれば、一たびくひては頭うちかたぶけ、しばしかうがへしばし味ふほどに、其匂ひいとあしく、みな〳〵はなお掩ひて吐き出だしたり、搗尾何某もおなじく喰ひしが、強食の名お得たりや有けん、其肉お隻に呑みては、汁おすひつゝ三度までかへたり、さらば閑かに味ひてといへば、うまきさまなれど、味ひもせで汁打ち吸ひて、ひたのみに呑みたり、実ははなおほふ人にもかはらざりけりとて興じぬ、