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四条流庖丁書
一差味可盛事、鯉のうちみ(○○○)の事は、ひばかいじきの上にかいしきありて、扠子付にても隻の打身にても盛べし、二枚重にては不可有之、一枚宛盛上也、但子付の時ふくさ盛に盛ても苦間敷也酢はわさびず成べし、但蓼出来の時分は青酢吉、いかなる魚鳥にても、青醋は苦間敷なり、鯛の差みの事、かいじきは同前二枚重に盛也、きがいしきお三所計に盛交也、酢は生姜酢成べし、王余魚の差みはふくさ盛にして、ぬた醋お能拵て参する也、乾のことは一枚うつくしく盛べし、かいじき同前、又ふくさ盛にしても不苦、前ことぢ鳥のみ有べし、ことぢおば上て鳥のみおばさげて置也、酢は蓼ず也、此魚は四条家の秘事第一成べし、鯉は海物の上おする由申つれ共、此乾に対しては乾上るべし、鱸の差味の事、前に申落候間又申、鱸の差味には、前に尾なども三切にても五切にても上て置て、同こわ腸お置べし、此こはわたおしら皮共雲也、是も当流の秘事也、鱏(えい)の差味はふくさ盛、飼しき同前、酢はぬたず成べし、若は実芥子の酢もよし、がざたには亀足して青酢お添て可参也、