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大草殿より相伝之聞書
一鯉の衣煮之事、鯉のつくり様、うろこお小刀のさきにて、魚のかは共におこし、それお方一寸二三分に切、くろ物に塩お入ていり、塩のいれたる時酒お入、又白水お入て、鯉のうろこお煮候而置候、鯉のつくりやうは三まいおろしにして、方一寸づゝみおさり、酒おかけおく也、したじのこしらへ様は、すましみそ飯のわん一はいに、まへしほざら程の物にすたでおさして、なま水より鯉お入て、ふたおもとらずに能煮たてたる物にて候、扠御座にあがる時、酒塩おさし用る也、又もり様うろこのかたになるやうにもり、其上にれうりしたるうろこお二つ三つほども打ちらし、其後汁おいるゝ也、すい口は山椒のこにて候、