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四条流庖丁書
一包焼の事、鮒の五六寸計なるお、能鱗おふいて腹お明、能洗て、扠結昆布、串柿、くるみ、けし、此四色の外に粟お蒸して可入、五色入て腹おぬいくヽみて薄たれにかつほ入て、能ほどに認て、しほ、酒しほ入て、貴人へは三つ計、其外へは一宛盛て、胡椒入て可参、此料理の事、四条家に秘する也、御門出には猶目出度かるべき事也、子細は天武天皇と大友王子と、御代お争給ふ時の事にや、天武天皇へ御敵なすべき事さま〴〵書て、鮒の腹に入て参らせらるヽ間、御覧有て即御謀共有ければ、御敵お亡しえて御心の如く成りしこと也、然間目出度御肴成べし、其後左大臣殿此歌およめると申なり、いにしへはいとも賢きかたヽ鮒包焼たる中の玉章又此肴出陣などにこそ同くは参らせ度は侍、腹の中に入色々の中にも、取分結昆布おいかにも小くして入たる、是お其時の玉章に表する間肝要可成、其外の物は随時可然物共お可入、粟お入は鮒の子お学たる也、歌に包やきとよめる所ににものに拵参すること口伝に有之可秘、