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瓦礫雑考

鴫やき たぬき汁今の茄子の鴫やきといふものは、鴫壺焼といふことより転れるなるべし、庖丁聞書に、鴫壺焼と雲は、生茄子のうへに、枝にて鴫の頭の形おつくりて置也、柚味噌にも用とあり、されどこれもやや後の製なり、猶古くは武家調味故実に、しぎつぼの事、つけなすびの中おくりて、しぎの身おつくりて可入、柿葉おふたにしてからぐる事あり、わらのすべにてからぐる也、いしなべに酒お入て煎べし、折びつにみゝがはらけにいためじほ置て可献雲々、折びつは口四寸五分、高さ二寸三分、足なし、下座は折敷也雲々、かはらけの上にあるはつけなすび也、柿葉二枚ふたにしたる也、ふたの上に鴫の下はしおさしたり雲々とあり、〈此書は天文四年の奥書あり〉