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大和物語

日もたかうなれば、此女のおや、少将〈○良岑宗貞〉にあるじすべきかたのなかりければ、こどねりわらはばかりとゞめたりけるに、かたいしほざかなにして、酒おのませて、少将にはひろき庭に生えたるなおつみて、むし物(○○○)といふものにして、ちやうわんにもりて、はしには梅のはなのさかりなるおおりて、その花びらに、いとおしげなる女のてにてかくかけり、 君が為衣のすそおぬらしつゝ春の野に出てつめるわかなぞ