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大草殿より相伝之聞書
うづらの羽ぶしもり(○○○○○○○○○)の拵様の事、本膳の中にくむ事あり、集養はおなじ事也、食おたべ候時は、鶉おばたべぬものにて候、食くいはて候へば御銚子参り、おの〳〵ひざお立られ候、時宜にて候に御酒三べん参りてより座中お見合、右の手にて鶉のだいお取あげ、左の手にそへて、鶉の左の羽がひの下おみる心もちして、又もとのごとく鳥のはしお我が前になし、鶉のくゞみたる花お右の手にて手折、左にもちたる鶉おばすこし持さぐるやうにして、花お先かんずる也、其後本膳と二膳のあいだ、まへのたゝみのかたへ花おおき、扠鶉のだいお、右の手にて、取て、これも我右の二膳の前のたゝみにおき、左の手おばつきて、右の手かた手にておくなり、軈而左の手お鶉の台に添て、右にて鶉の左の羽ぶしおぬきやりて、台のあたりへおく、さて又羽の内にいか程も集養ありたきほど、鶉もりたる身の右の手にて取おろし、羽の上に置て、其後又鶉の台右の手にて取、左の手にすへ、能々かんじ、右の手にとり渡し、本の前にすゆる也、扠羽ぶしに置たるさかなお、右にて取左の手にすへ、右の手にて集養有也、又以前の所へおきて、御酒のあいだは幾度も集養あるなり、扠又御湯あがりはしおおき候て、しぜんうづらのみ残り候はゞなにとなく本膳に羽よりこぼし、扠又鶉の羽お右の手にて鶉にかぶせおく也、其後右の手にて花お取、少ほうびしてかくやうにして懐中する也、