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当流節用料理大全
煎酒の仕様一古酒三升 一醤油五合 一かつお一升、成程細く削、水にてざつと洗はかり申候、水にて洗不申は二升入也、右の三色能まぜ、すみ火のうへにてわかし、酒のにほひのき候までいり、大方にえ申時、いり塩お入かげん仕候、又酢おも心次第加へ申候、何れもにえ申内にくはへ候、又梅ぼしお廿程も入候、かつお其まゝこして取申候、久敷置候へば、かつおくさく成申候、此煎酒ははやく出来申候、精進煎酒 古酒壱升あま口なる酒よし 一昆布二本、上々お細かに割む、一かんへう 右かんへう細に刻み、昆布のかさ〈半分、〉但かちぐりも入候、是は打くだきこんぶのかさ〈半分、〉一梅ぼし〈少は廿五、大は廿、〉右の内へ水壱升いれ、よくかきまぜ、炭火のうへにてそろ〳〵とわかし、本の酒一升のかさ程にせんじつまりし時、よき程塩すくなくはあつき内にいれ申候、同早煎酒 古酒四盃 一醤油一盃 一酢半盃 右三色合、炭火の上にて一淡にやし、其儘おろし、箸にてかきまはし、人はだにさめし時、又火にかけにやし右のごとくさます、かくのごとく三べんにやし候へば、いり酒に成申候、