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貞丈雑記
六飲食
青き柚(ゆづ)お小くけづりて香に入るお、古はかうとうと雲、鴨頭と書なり、青柚(あおゆ)の皮の汁の中に浮たる体、鴨の水に入て青き頭お出して浮たるに似たる故なり、今はすい口といふ、 〈頭書〉鴨、玉篇に鳥甲の切音あふなれども、俗にかふとよみ来れり、 太平記卅五の巻、湯川の庄司が宿の前に、作者いもせの庄司と書きて、宮方の鴨頭(かうと)になりしゆの川は都に入りて何の香もせず、右落首は湯の川お柚の皮に取なしてよめり、