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四条流庖丁書
一俎紙(いたがみ)上に土器可置様の事、鯉お俎に置て出時、内より庖丁人お召出すべきには、著(はし)刀お俎上に不置して、俎紙の上に土器お置て出也、此時は坐中の心得に、内より人お召出すと覚悟すべし、又俎の上に著刀土器お所置時は、如此杉差のひれの下に庖丁刀お敷て、著おば俎紙に置て、同土器お可置也、此法お不知者は、俎紙の上に著刀土器などお一に取集て置間、俎紙の上せばくして見悪き可成、杉差のひれの下に置庖丁の刃向によりて、庖丁人の心遣有べし、魚の尾方へ刃お向ることも有べし、又頭の方へ向ても置也、庖丁人の心遣お以けいこの程顕也、但俎紙の上に刀お置ども、此用心は有べし、然間当流には俎紙の上にも置様は、刃方お俎の上へ成て置也、絵図あり、刀のかいべらのことあり、同袖返し袖流のことあり、〈○中略〉一当流片身下に、諸人よりは不切して斎太(さいた)お先わかつことは、陽の庖丁なれば前より切と也、