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当流節用料理大全
料理人諸鳥庖丁指南まないたの前大方一尺二寸計のつもりに、間おあけて畏り、足おくみて腰おどつくとすへ、身づくろひして、扠箸庖丁お取いだし、箸庖丁一つに右の手に持そへ、俎まへ左の足の上のとおりになみおよく直す、猶箸は左、庖丁は右、大方一寸二分計のつもりにあけて、銘お上になして置べし、扠鳥魚にかゝり候時、箸庖丁に手お一度にかけ候と、はやく庖丁おさつと引分、箸は則左の足の通りにきつとたてゝ持かため、庖丁は右の足のとおりにはおうへになして、先おきつとたてゝ持かため、しづかに大手前にかゝりたるがよし、総じて俎前にて湯水お好み、物おみだりにいひ口おたゝき、頭おまげ腰おかゞめなどする事悪しゝ、たしなみ也、鶴白鳥雁鴨は、先雁かしらお前になし、俎のまん中になおし、まのはぶしおひろげ、首お左の羽がいに持せ、左のむねより庖丁にて水おなでおろし、右おなでゝ左のわきに箸おたて、左のむねより切めお付、右のむねよりおろし、頭お右の羽がいにもたせ、左のむねおおろし、扠もゝのまのつがいおはなし、左より切はなして、俎右のむかふのすみの足お右になしておき、頭お左へまげて右お切はなし、右のところへなおすべき也、扠胴がらは左の向のすみへなおすべし、扠俎およくなでて、左の身より引なおし、足お右へなして、頭の次へなおし、羽ぶしのつがいおはなし、身お俎むかふの中のはづれにおき、羽ぶしは胴がらの通りの下に置、はしは中の向ふのはづれに直す、右身おもかくのごとし、雉子山鳥鳩等は、先きじ頭お左にして、はしお前へむけ、腹お前へむけて、よこに羽がひおしかせてなおし、頭おねより切て、左の向ふのすみへ直し、扠おろしやう、何れも右に同前なり、