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当流節用料理大全
海川魚類庖丁指南鯛鱸茂魚等は、先たい頭お左にして、腹お前へしてなおし、包丁にて尾の方へ背中腹のとおりお三べん水おなでおろし、又上へなであげべし、是はこけの有なきおしるべきため也、扠箸お口へよくさし込、包丁ながしおよく切こみて、箸お内のえらへよくたてゝ、包丁ながしのきはより頭お切おとし、水はきお右になして、頭おむかふへむけて、俎左のむかふのすみへなおしおき、扠身の切口へ箸おさし込、尾の方へおろすべし、身向ふへかへし、俎右のむかふの角へ、尾の方お右になして直し、扠下身上下へかへし、尾お左へなして、頭の方より尾のかたへおろして、頭の方よりかへし、右の所にうすみとうすみとあふやうになおし、中打お真中より一打に打て、尾の方おうへにのせて、尾さきお左へして、頭の下に置べし、扠俎およくなでゝ、うは身より引よせ、頭の方おまへになして、ひれおそとへかへして、うす身おば取、中打お下に置べし、身は中のとおりに尾おむかふへなしてなおし、身おもかくのごとくにすべし、鯉鮒うぐひさは等は、先こい頭お左へなして、腹お向へむけてなおし、右のごとく三べんづゝ水なでおして上下へかへし、右のごとく水なでおして、箸お口へよくさし込、包丁水はきの内へ、はお上にしてさしこみて、前の方へあおのくやうにおせば、腹うへになる也、扠箸お向ふのえらぎはへよくたてゝ、包丁にて向の一のひれおおとし、はしにて帰らぬやうにおさへ、扠前の一のひれお包丁にてはねおとし、其儘頭お切おとし、箸おぬき頭お向ふの左のすみに、水はきおむかふへむけて、切口おたてゝ、ひれお両へひろげて置べし、川魚は頭にひれの付やうにおろすべし、扠身の切口へはしおさし込てたて、頭の方より尾の方へよくおろすべし、扠むかふへかへし置、右のごとく右の角へ直し、又下身おも上下へかへして、頭のかたお右になしておろし、右のごとくなおすべし、扠俎およくなでゝ、右のごとく身お引よせ、うす身お取、身も中打もなおすべし、鮭、鱒、あめ、なまず、鰹、めじか、鰤はおろす計の事也、〈直し様右同前〉海魚は腹お前にしておろすゆへ、初は向ふになすなり、川魚は腹おむかふになしておろすゆへに、初めは腹お前になすなり、是は手まはしはやきときの事なり、万海川魚小切形は、 背切(○○)とは、頭おおとし両のうすみ計腹のなりにきはより切て、ごみはきのふくらおもまつすぐに成様に切てさり、頭の方お右になして、およぐごとくにしてひれお付て、厚さ四五ぶにも木口切にする事也、是は鯛鱸等に用ゆる事也、 平背切(○○○)とは、右のごとくにして、尾お右へなして、腹お向ふにても前にても平にして、尾の方より包丁ねさせ、厚さ四五分計、木口切にする也、 片背切(○○○)とは、右のごとくにし、右にても左にても片身おろして、平せぎりのごとく、片方に骨お付て、尾の方よりきる事也、 すい切(○○○)とは、三枚におろして、うす身おさりて、左の方より庖丁お成程ねさせて、すくひ切にきる事也、 ぶり切(○○○)とは、おろしてうす身おさり、先よこにいか程にも切て、それおたつに切事也、ぶりおかやうに切はじめたるによつて名付候也、 一もんじ(○○○○)とは、おろして尾の方よりよこに包丁おたてゝ、一文字に切事也、さいとは、大さ一寸四方計に四かくに切事也、 鯛鯉などの木口作(○○○)りとは、おろしてうすみおさりて、中のあかみお二つに立ぬきて切、尾の方より包丁お立て、厚さ一分計に皮お付て、身のくづれぬやうに作る事也、同指身などのたゝみ作(○○○○)りとは、おろして右のごとくに木どりて、皮おさりゆがきて、水にてよくひやし、木口にうすく作りて、かさねおく事也、但大だゝみ小だゝみといふ事有、 なげ作(○○○)りとは、右のごとくにして、包丁おすぢかへねせて、平めおうすく作る也、 鯉筒切(○○○)とは、こけ計よく取て、腹わたもあけずして、其儘尾の方より庖丁お立て、厚さ四五分計に丸切にきる事也、但しいお切つぶさぬやうに心へべし、いと雲物はかみに有物なり、つぶれぬればにがくてあしゝ、鯛の平背切に同じ、 けぎり(○○○)とは、こけもとらずして、右のごとくこけ共に切事也、右筒切に同じ、鮒などの一つ切(○○○)とは、こけ計取て、腹もあけずして包丁お立て、厚さ一寸計にもまる切にする事なり、〈○中略〉 背ごし(○○○)とは、腹わた計よく取、肉およくあらひて、其まゝ尾の方より、木口切に少し包丁おねせて作る事也、是はあじ、あゆなどの鱠に用る、〈○中略〉 片背ごし(○○○○)とは、片々おろし、かた方の骨のつきたるお、右せごしのごとく作る也、 切かけ(○○○)とは、三枚におろして、いか程にも切て、身の方お四五分計にも、四方に包丁めお付て切かける事也、これは杉やきなどに用る、 切やき物大ぎりとは、皮お付てうすみおすきてとり、一もんじにきる事也、 あんかうつるし切(○○○○○○○○)とはいへ共、つるしあらひの事也、よつてあらひ方の役也、則つるして口より水お入てひれおさり、皮おはぎて骨のつがひおはなして、みお三枚におろす事也、扠切方は包丁の役也、