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近世奇人伝

堅田祐庵(○○○○)祐庵は北村氏、淡海堅田の浦の豪農にて、茶事に熟し物の味おしることは、いにしへの符朗易牙にも恥ず、伝る所の話多し、〈○中略〉かゝれば人に物お饗すること必つゝしめり、所がら湖中の鯉鮒の類お調ずるに、魚板数枚用ゆ、はじめ鱗おはなつより肉お切にいたるまで、次お追て板お転ず、かくせざればうつり香ありてなまぐさしといへり、