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皇都午睡
三編上
貨食に名高き鳥越の八百善は、以前は客の挑らへにて自由なること出来たれど、当時は精進料理の仕出(○○)しのみおして、町家にて三十人五十人の法事仏事あれば、挑らへに任せ、朱黒青漆とか、膳碗家具迄残らず取揃へ、引菓子に至る迄揃へ、送り膳の提箱迄持来りて、勝手混雑なく殊に弁利よろし、諸道具は火早き所ゆえ、内に有ども遣はず、皆挑らへること也、