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日用助食竈の賑ひ
夏飯の腐らざる焚やう仲夏より仲秋迄〈五月より八月迄お雲〉飯お焚には米性お糺すべし、米性あしきと洗ひのたらざるははやく腐る也、随分よく洗ふべし、又川水にて焚と井水にてたくは、井水の方は半日もたもちかた悪し、〈○中略〉朝焚んと思はゞ、前日の夕方、右のごとく洗ひて、釜にいれ、其まゝ焚やうの水かげんに仕かけ置、翌朝水お仕かゆる事なく焚べし、火は初め強く、吹上りたらば半分に薪お減じ、随分蓋お明ざるやうに焼べし、〈○中略〉扠右のごとくして焚(たく)米の中に、梅干お一つ入て焚ば、仮令一日にてあしくなるは、二日もたもつべし、是飯のあしくならざる秘伝也、梅干の酸味飯にうつる事なし、