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大和本草
四造醸
粳飯(うるしいひ)凡炊稲飯有三法、たきぼし飯、湯取飯、二度飯なり、たきぼし(○○○○)は、白米お能洗ていかきにあげ置き、薪多くたき、釜に熱湯おわかして米お入、ふたおして、一沸して薪お減じ、火おやわらかにたき、能熟したる時、ふたお開く、いまだ熟せざる内にふたおひらく事なかれ、水の分量は米の多少によらず、釜の中にて、米の上に水一寸あがるほどなるべし、又一説に凡米一斗に水一斗二升お用ゆ、初火お盛に多くたき、後は薪お去もよし、初二三度の間、飯の熟するかげんおしらずして、たきそこなふ事あり、此法米の多少によらず、炊き習ひて後はあやまりなし、たきぼしは脾胃壮実の人に宜し、又或曰、陣中などにて飯の早熟せん事お欲せば、飯なべの下お水につくれば、早く熟す、湯とり飯(○○○○)、朝の飯は白米お前夜より水にひたし置て、明朝釜に水多く入て火おたき、沸とき米お入、半過熟したる時、杓にてくみていかきにあげ、水おしきりにかけて、子ばりなきほどによく洗ひ、蒸籠にかけて能むすべし、又なべに入て、下に炭火お置てむすもあり、これは飯のりの如くになり、子ばりてあしヽ、せいろうにてむすがよし、晩の飯は、朝飯過より米お水にひたし置べし、湯取めしは脾胃虚の人積滞ある人に宜し、壮人には宜しからず、二度飯(○○○)亦二法あり、一法はたきぼしの冷飯お用ゆ、先鍋に湯おわかし、たぎる時に飯お入、やがて飯お鍋に置ながら、其湯おなべの口より悉くしたみ去て、ふたお掩ひ、薪お去、火お少もやし、やがて熟す、或は炭火にて熟す、此法飯よく熟し、やはらかにして子ばらず、いくたびにてもしそんぜず、あたヽかなる飯おふたヽび飯にするも此法也、但冷飯のよきにはしかず、朝に晩の飯お一度にたきて、晩は冷飯お如此してよし、常に冷飯おあたヽむるも此法よし、此法も湯とりめしと同く、脾胃虚の人、積滞ある人に宜し、又一法、湯取飯お用、蒸籠にてむす、ゆとり飯おなべにて二度あたヽむれば、糊の如になりてあしヽ、饙音分、是ふたヽびいひなり、朱子詩伝曰、蒸米一熟、以水沃、乃再蒸也、