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礼容筆粋

汁おかくるに節之事飯に汁おかけ候事は、上客お見合する也、上客早く参り仕廻給はゞ、各早く喰終るべし、貴人汁おかけ給ふお見て、皆々汁おかくる也、何れの汁にても賞玩の汁おかけ候べし、たとへば椀中お三分一程にくひへらして、片はしに汁お卒度かけ、少づゝ箸お以て汁にひたして喰べし、たくさんなる飯に上から汁おかけ、箸にて拌(かきま)ぜ、椀中およごし、四五分ならではよごさゞる箸お一二寸もよごし、あまさへ飯粒なんどの付たるお、横ぐわへにくわへて是おおとし、或ははしと箸とにてかすりおとしなどする体、誠に見苦し、小人などは汁おかけ給ふ事あしゝ、