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武将感状記

一源君〈○徳川家康〉於参河毎歳夏中は麦飯たり、近侍の人潜に白米の飯お椀の底に入れ、上に麦飯少許お蓋て出しければ、源君御覧ありて、女等予が心お不暁、以予吝ると思へるか、今戦国の時にて兵役動ぬ時なし、士卒煩擾にして寝食お安ぜず、予独何ぞ飽食に忍んや、且我一身の奉養お倹約にして、以て軍用に給せんとす、百姓お労して自ら豊なる事おせじと仰られければ、聞く者皆悦服せり、