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徳用食鏡
豊後黄飯(わうはん)黄飯は栄曜なる様なれども、焚方に依て利方に成べければ、援に豊後臼杵辺にて、もつはら食する通りお記す也、扠茄子のある時分なら、茄子お多く用ふる也、猶小ならば厚さ二三分輪切にし、大ならば二つにわり、右の厚さに切用ふ、扠芋萸(から)の生お長さ壱寸六七分に切、三つ位にわり水にひたし置、牛房おさゝがきにして是も水にひたし、各よく悪汁(あく)お出し、又葱お壱寸弐三分に切、皆一同に鍋に入、よく焚て醤油おさし、いつも汁などにするよりよく煮て、其所へ魚〈こちかます、くちの類、〉の小骨なく、油のすくなきお見合、鱗おとり、頭お去り、鍋の中なるかやくのうへに入、しばらくたきてよく煮たる時、箸おもて骨おすごきとり、右かやくとかきまぜ、合子(かさ)にもり、飯のうへにのせ、かきまぜて食する也、此飯は常の飯の通りに仕かけ、其中に梔(くちなし)お水に出し置、すこし入て焚べし、黄色の飯と成也、利方にたくには、梔お入るにおよばず、〈○下略〉