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三省録
二飲食
食は人の天なりといふて、食なければ一日もたちがたきもの也、故に古人は食するごとに、先づ食お少しばかりとり分けて、先代飲食おはじめたる神へ備へ祭りしと謂り、今も僧家には素飯(さば)のめしとて、先づ食お少し取わくる事あり、また片田舎の野人は、今も食せざるさきに飯おいたゞきて食するは、古代の素飯の遺意なり、〈○下略〉