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源平盛衰記
四十五
内大臣京上被斬附重衡向南都被切并大地震事本三位中将重衡卿は、〈○中略〉東の旅に下り上り、風に窄(やつ)れ日に黒みて、あらぬ貌にして衰へ給たれ共、偵に余の人には替てぞ見え給ける、暫有ければ御食賂出して進せたり、是や此、下臈の雲なる死粮(しにかて)とは隻今死する者の、魚鳥不可有とて、取除さす、散飯(さば)多(たぶや)かに取て、仏前に備て、其後はまひらず、〈○下略〉