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粥は、かゆと雲ふ、或は炊き湯の義なりと雲ひ、或は濃湯の義なりとも雲ひて詳ならず、粥お大別して汁粥堅粥、の二類とす、汁粥は蓋し堅粥に比して其汁多きに由りて名づく、古へ飯と雲へるは、米お甑にて蒸し熟せしめたるお謂ひ、今の飯は即ち堅粥にて、今の粥は即ち汁粥なりと雲ふ、粥には又白粥、茶粥、赤小豆粥、豆粥、粟粥、蕎麦粥、蔬粥、薯蕷粥、栗粥、橡粥、五味粥、七種粥、紅糟(うんざう)粥、紅調粥、尾花粥等の別あり、白粥は普通の粥にて、茶粥、赤小豆粥等に対して、其色白きに因れり、茶粥とは、茶お以て煮熟したるものにて、京都、大阪、奈良等にては、日常之お食す、赤小豆粥は、米に赤小豆お和して煮熟したるものにて、正月十五日には必ず之お作り、移徒にも亦之お作る、薯蕷粥は、薯蕷お味煎、或は甘葛煎にて煎たるものにて、古への饗宴には、常に之お用いたり、七種粥は米、粟、黍、薭等の七種お和煮したるものにて、正月七日、又は同十十五日に専ら之お食す、紅糟粥は十二月八日之お食す、紅糟粥は即ち赤小豆粥なりと雲ひ、或は然らずとも雲ふ、尾花粥は八月朔日之お食す、或は薄色の粥なりと雲ひ、或は薄の穂お黒焼にして粥に雑へたるなりとも雲ふ、餗はこながきと雲ふ、又糝とも書けり、こながきは粉菜掻にて、米粉お以て菜羹に掻雑へたるお雲ひ、又みそうづとも雲ふ、後に謂ゆる増水即ち是なりと雲ふ、増水は、又雑炊、雑水とも書けり、