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徳用食鏡
若狭の白粥若狭の国小浜にては、焚かげん功者なれば、若狭流の焚方と雲也、扠白粥の焚やうは、竃の賑ひにのぶる如く、米お洗ふに少し前目に、未だ水に白みある位にとぎ、すこし堅きかゆの水かげんにしてたき、吹あがらば火おほそめ、一二粒あげてつまみ見るに、未だ米のしんあらんかと思ふ頃薪お引つくし、静に炉も引て、しばらくむらし置、釜よりすぐに茶わんにもりて、其上に葛お醤油にてねりたるあんおかけ、かきまぜ食すれば至て美味也、猶白粥の中に塩お入る事なし、米は上白の新米ならば猶味ひよろし、如此して食すれば、別に菜なくても食する事なれば、大に徳用也、