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読視聴草
七集一
神仙粥糯米〈二三勺〉生姜〈大ぶり五片〉水二碗入て、土鍋にて煎じ二ふきほど煮たちたる時、小根おさらざる葱のしろみお六七本細に切りて入、米葱ともやはらかになりたる時、酢お小皿に四半分ほど入てかきまぜ、熱き内に食す、もし食しかぬる人は、湯ばかり飲てもよし、食し終らば風のあたらざる所に臥してあたゝまり、汗のいづるお度とす、右神仙粥の方は、清の褚学稼が堅狐集に出て、感冒、風寒、暑湿、頭疼、骨痛、四時、疫気、流行等にもちひて即功あり、右等の証お得たりとおもふとき、早く用ゆれば、他の医療に及ばず、愈る事神の如し、是は糯米の補養お君とし、生姜と葱との発散の品お臣とし、一補一散のうへ酢にて収斂すれば、深き妙理ありて、尋常の発散剤と違ひ、格別の神薬なりとぞ、〈もち米なきときは、うる米にても功あり、酢おかゆの中へいるゝおきらふ人は、別に少しのみてもよし、又梅干おくらふよし、〉