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今昔物語
十二
天王寺別当道命阿闍梨語第卅六今昔、道命阿闍梨と雲ふ人有けり、〈○中略〉陸奥の守源の頼清の朝臣と雲ふ人、左近の大夫とて、極て不合にて有ける時に、此の阿闍梨は父の伝の大納言の縁に依て親しかりければ、常に其の房に行けり、而るに其房にして頼清粥お食けるに、粥の汁(○○○)なりければ、頼清此の御房には粥こそ汁なりけれと雲へば、阿闍梨道命が房〈○房一本作為〉には粥汁也、主の御家には飯固しと雲ければ、其の座に有りと有る人、頤お放てぞ咲ける、