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伊勢物語古意

かれひは乾飯也、和名抄に餉お加礼比於久留とも、加礼比とのみもよめり、いにしへよりかれいひお略してかれひといへる也、いお略せる例、もちいひおもちひと雲類也、 〈首註〉旅にかれ飯お持は、昔の常也、今も山中へ入人は、こは飯お干てもたるおばちひさき布袋にとりわかちて水に打入、即引上て駄のかたへなどに付おくに、ほどなくほとびてもとのこは飯となる也、こはいにしへは駅の遠くてせんかたなく、又野山の旅には必用意せし物也、ある人餉おかれひおくるとよむにつきて、かれ飯は世の常の飯也といへるはわろし、今の常の飯はいにしへかた粥と雲ふ物にてこそあれ、昔も今もかれひと雲は、こは飯お干たる物のみ、〈○下略〉