[p.0497]
嬉遊笑覧
十上飲食
温飩、庭訓首書に、貞丈雲、〈○中略〉巻懐食鏡に、啓益按救荒野譜雲、以水和麪作皮包菜肉糖蜜等餡、湯炊煮熟、象混純不止之義、今俗多用之祀先雲々、按ずるに、混純後に食偏に書かへたるなり、煮て熱湯に漬して進る故、此方にては一名お温飩ともいひしなり、今世温飩は名の取違へなり、それは温麺にてあつむぎといふものなりといへり、鶏卵うどんといふは、麪に砂糖お餡に包みたるものなり、これらおおもふに、其もと餛飩なりしことしらる、名の取ちがへにもあらず、物の変じたるなり、むかしは温飩にかならず梅干お添て食たり、懐子集、うどんものぶる縡筵のうへ〈一歯〉梅干のすいさんながらまじはりて、宗因千句、梅干くふた真似は其儘膳くだり扠もうどんやこほすらん、料理物語、うどん胡椒梅とあり、