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大草殿より相伝之聞書
一あつむぎ集養の事、先さかなに取替られ候時、さかなのはしおおさめ候事、前のごとし、いづれも御膳参りたる時、すさいおとり、我左の膳のすみにおく、又左の手にて膳の右のさきのすさいお取て、膳の左のさきにおく、其後右の手にて中のすさいお取て、我前右のすみにおくなり、又はしお取て膳にすみかけておきあつか物参り候へば、右の手にてわんお取、左の手に取渡し、右の手おそへて、あつか物おうけ、右の手にて麦棜お膳の右のさきのすみに押よせ、汁わんお膳の中に置て、こせう紙お右の手にて取て、こせうお汁に入、膳の下座のかたの下におく、足付なれば足付の下へ押いるゝ、其後はしお取こせうおかきまぜ、わんには手もかけずして、あつむぎお入、又わんお持あげてくう也、麦おしきのむぎみなに成候へば、右の手にはし取なおし、麦棜お取て前の方にもおく、前の方せばく候へば、膳のさきにならべてもおく也、麦棜の下一つになりたる時、さいしん参りたる時、いま喰たるおしきおば、さいしんあけたる人取てかへり候、今度は又膳の左のさきのもりこお、汁に入てかきまぜ、麦お入てくう也、扠又肴参り候へば、膳お下座へ押くだし、はしおおさめ候、いづれもさかな参り候て、はしお取て右の手にて肴の汁お取、左右の手にて取汁おすふ也、扠汁のみおくいて、又汁おすふて皿おば膳におくべく候、其時かならずさしみあるべし、くい候はゞ、さしみおす塩にひたしてくふなり、たとひくはず候共、さしみおす塩につけておく也、扠はしお又以前のやうに膳に、すみかけておき、御酒の事前のごとし、又さかな取時は、はしおおさめ候也、