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合類日用料理抄

蕎麦切の方一蕎麦の粉能々吟じ、扠こね申候、いかにも能にえ候湯お、少右の粉におとし、はら〳〵仕候程にこね合、其後水にて能かんにこね候、打様はつねのごとくにしてゆで申候、能ゆだり申候時、桶に水お入さつと洗、笊(いかき)へあげ申候、扠桶に右のゆで湯にても、又白湯にても入、右のそば切入れ、笊お直に上に置、又上から能にえ湯おかけ申候、初入候湯と、のちに上からかけ申候湯とのゆげにてむし申候、ぬめりのき乾出申候時よく御ざ候、同蕎麦切秘伝の方一そばの粉常のごとくねり、玉に丸め、厚さ五分程にひらめ、打粉に小糠おふるひ遣候へば、手につき不申、のびよく候、扠常のごとくゆで申候、湯の内にて小糠の分はすきと落、小糠の匂少もなく候、総而打粉にて湯ねばり申候故、そば切出来候へども、何返も洗不申候へばあしく候が、小糠打粉に仕候へば、少も湯ねばり不申候故、そば切二三返すゝぎ候へば、すきと仕候故のび不申候、そば切ゆでゝ久持様一そば切ゆで申時、其ゆで湯一荷ほどの中へ、さたう少、くるみ五つ入、常のごとくゆで、扠上げ申候、ぬる湯にて洗、笊へあげ、水おかけ、扠物に入置、少も損じ不申候、給(たべ)候時湯おかけ、つねのごとくたべ申候、仕立に少もちがひ申さず候、