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還魂紙料

慳貪〈○中略〉蒸蕎麦切(○○○○)、かる口男、〈貞享元年頃印本〉飢おたすくる旅籠町、弓手も馬手もそば切屋、おはひりあれや殿さまたち、一杯六文かけねなし、むしそば切の根本と、声々によばはれども雲々、〈下に観音のことあり、浅草はたご町なるべし、〉といふ事見え、又西鶴一代女〈貞享三年印本〉五の巻、蓮葉女のことおいふ条に、女ながら美食好、鶴屋の饅頭、川口屋のむしそば、小浜屋の薬酒、椀屋の蒲鉾、樗木筋の仕出弁当、〈これは大坂のことおいふなり、弁当屋のこと、下に見えたり、〉鹿子ばなし、〈元禄三年印本〉浅草観音寺内にて能ありけるとき、中間一人諏訪町あたりにて、蒸籠むしそば切、一膳七文とよびけるとき、〈○中略〉といふ話あり、貞享元禄の比は、蒸たるお好る人多かりしなるべし、今蕎麦切お盛器に蒸籠お用ふる事あるは此余波歟、