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完天見聞記
蕎麦屋の皿もり井となり、箸のふときは蕎麦屋の様なりと譬しも、いつしか細き杉箸お用ひ、天麩羅蕎麦に霰そば、皆近来の仕出しにて、万物奢より工夫して、品の強弱にかゝはらず、唯目およろこばす事計りにて、費のみ出来る也、食物も無益の事ばかり精製して、其本品の味お失ひしお、賞美する事笑ふべし、