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善庵随筆

完文の頃けんどん温飩盛に行はれしゆへ、蕎麦も温飩にならひて、けんどんにせしなり、けんどんとは俗に生質温和にして、財利にこせつかざる者お、おんとうといふ、おんとうと、うんどんの音の近きお以て、此うんどんはうんどんならで、けんどんなりといふ意にて、一杯盛切にしてかはりお出さず、給使もせざるより、けんどんとはいひし、これお便利なりとて賞玩し、下々の者とりはやし、盛に、行はれしより、温飩屋蕎麦屋などいふもの逐々に出来ぬ、