[p.0526]
本朝世事談綺
一飲食
慳貪江府瀬戸物町信濃屋といふもの、始てこれおたくむ、そのゝち所々にはやりて、さかい町市川屋、堀江町若菜屋、本町布袋屋、大鋸(おが)町桐屋など、名おあらそふ中に、鈴木町丹波屋与作といふものぞ、名高かりし也、これおけんどんと号るは、独味(どくみ)おして人にあたへざるの心、又給仕もいらず、あいさつするにあらねば、そのさま慳貪なる心、又無造作にして倹約にかなひたりとて、倹飩と書と雲説此よろし、