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餅は、もちひと雲ひ、後世には単にもちと雲ふ、糯米お蒸し、搗きて作る、又粟、黍、蜀黍、葛、蕨、橡実等お以て製することあり、又蓬お糯米に加へて製するお草餅と雲ふ、古くは母子草おも用いたり、餅お食ふに、赤小豆、大豆(きなこ)粉、栗粉、胡麻、沙糖等お糝るお常とす、餅お神仏に供し、又賀儀に用いる事は、我国古来の風俗にして、正月元日の鏡餅、雑煮餅お始め、三月上巳の草餅、五月五日の粽、十月玄猪の亥の子餅等、其他中行事に餅お用いること頗る多し、団子は、糯米或は粳米の粉にて製す、又黍、蜀黍、小麦等の粉にても作る、其之お食ふに、赤小豆、胡麻、大豆粉、沙糖等お用いること、凡て餅に同じ、