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倭訓栞
前編三十三毛
もちひ 糕粢おいふ、餅は麪粢也と註せれば、小麦団子也、〓も麪餅也といへば同じ、望飯の義、望月より出たる名なるべし、歳首に神前又は君父に供るお、鏡と称するも亦しかり、東国にそなへと呼、又ふくでんともいふ、越後信濃にふくでといへり、後拾遺集飼書に、もちひかがみと見え、又もちひのますかゞみとも見えたり、江次第に、餅鏡用近江火切、侍中群要に、近江国火燧作餅解文と見ゆ、〈○中略〉正月朔旦粢お食するよし、五節篇に見えたれば、西土もまた同じ風也、説文に粢稲餅也、謂炊米煉之搗之不為粉也、一説に説文字解に、〓滋本字蓋〓粢也と見えて、〓食の唐音もおづちいなれば、転じてもちといふ也ともいへり、又不托お訳す、艾糕葛糕蕨糕牛房糕茄子糕粟粉糕柿搗糕橡実糕等の品類あり、古へ餅に幾枚といへり、霊異記にも、大枚の餅と見ゆ、